山浦真雄

刀、銘 信濃国真雄

46回目は松代藩工山浦真雄です。
松代藩、真雄と来れば”松代藩荒試し”となるわけですが、今回は安易にその常道をとる事に憚られる気持ちがあり、控える事にします。

山浦鍛冶といえば私はまず刀剣美術誌に掲載される花岡忠男先生の論文を思い出します。
以下にざっと調べた掲載号を上げます。(この他にもあります)

  廃刀令後の真雄・兼虎閑話(その一) 刀美154
  廃刀令後の真雄・兼虎閑話     刀美155

  山浦真雄の最初期銘
  「正則」・「寿守」に就いて    刀美169

  山浦真雄『松代日記』註釈(上)  刀美178
  山浦真雄『松代日記』註釈(下)  刀美179

  佐久間象山と山浦真雄事蹟考1   刀美200
  佐久間象山と山浦真雄事蹟考2   刀美201

  直胤・真雄 松代藩作刀余事1   刀美261
  直胤・真雄 松代藩作刀余事2   刀美262
  直胤・真雄 松代藩作刀余事3   刀美263
  直胤・真雄 松代藩作刀余事4   刀美264
  直胤・真雄 松代藩作刀余事5   刀美265
  直胤・真雄 松代藩作刀余事6   刀美266
  直胤・真雄 松代藩作刀余事7   刀美267

  真雄・清麿 揺籃期の周辺     刀美303
  真雄・清麿 揺籃期の周辺2    刀美304
  真雄・清麿 揺鑑期の周辺3    刀美305
  真雄・清麿 揺籃期の周辺4    刀美306
  真雄・清麿 揺籃期の周辺5    刀美307
  真雄・清麿 揺籃期の周辺6    刀美308
  真雄・清麿 揺籃期の周辺7    刀美309
  真雄・清麿 揺籃期の周辺8    刀美310
  真雄・清麿 揺籃期の周辺9    刀美311

  源清麿―新資料と其の追究1    刀美324
  源清麿一新資料と其の追究2    刀美325
  源清麿―新資料と其の追究3    刀美326
  源清麿一新資料と其の追究4    刀美327

  寿隆と真雄・清麿逸事1      刀美567
  寿隆と真雄・清麿逸事2      刀美568
  寿隆と真雄・清麿逸事3      刀美569

  源清麿晩景1           刀美579
  源清麿晩景2           刀美580
  源清麿晩景3           刀美581

  清麿 武器講・長州行き伝説疑異1 刀美594
  清麿 武器講・長州行き伝説疑異2 刀美595
  清麿 武器講・長州行き伝説疑異3 刀美596
  清麿 武器講・長州行き伝説疑異4 刀美597

  真雄・清麿と兼虎 その実歴1   刀美642
  真雄・清麿と兼虎 その実歴2   刀美643
  真雄・清麿と兼虎 その実歴3   刀美644

  真雄・清麿と兼虎 逸史残霞1   刀美698
  真雄・清麿と兼虎 逸史残霞2   刀美699
  真雄・清麿と兼虎 逸史残霞3   刀美700
  真雄・清麿と兼虎 逸史残霞4   刀美701
  真雄・清麿と兼虎 逸史残霞5   刀美702

「真雄は清麿の兄で・・・」。真雄についてまだまだ一般的にはこの様に捉える方が多いかと思いますが、花岡先生の論文を読み真の真雄像を知ればそれまでの認識は一変するはずです。

山浦系の作品は”錵”のイメージが強いと思いますが、多数残る真雄本人の言葉からは、錵を好んではいなかった事がうかがわれます。
実際拝見する真雄の作品からも錵出来が多い印象を持って来ましたが、花岡先生の「山浦真雄『松代日記』註釈(上)(刀剣美術誌第178号/昭和46年11月)」に以下の内容があり納得しました。
『「日記」には「匂のみ鍛造して錵物は造らず」とあるが、遺作経眼せるに沸出来(相州伝)と匂出来(備前伝)の両作があるが、相対的には寧ろ沸出来が多い。上田打の沸出来は品の良い小沸を匂が包んだものが多く、これ等を匂物と総称したものと思われる。沸出来の場合刃中に沸で縞状の砂流しのかかるものが多いが、この場合もふっくらと匂に包まれて、真雄独特のものである。』
今回掲載させて頂く真雄も、匂い主体で部分的に錵が交じるも所謂「裸錵」ではなく、匂いに包まれた品の良い粒子となり、真雄が目指した作風がここに体現されているのではないでしょうか。



村正③

短刀、銘 正宗(村正銘の改竄)

45回目。村正三口目です。
今回は銘を改竄された短刀。
村正の「村」の字を消し、下に「宗」を足して「正宗」と改竄されています。
村正は徳川家から忌避された歴史があり、銘の一部或いは全てが消されたり、元の銘に鏨を入れ改竄されるなど、銘に手を加えたものが多く見られます。
村正は地鉄の良い作品が多く、本短刀も地錵と地景のよく入る良質な地鉄。
刃文は直ぐ刃に少し外に開き気味の互の目をまじえた腰刃を焼くなど、村正独特の作風が味わえる短刀です。

銘 □正(村正)
こちらは「村」の字を鏨で消し、「正」一字が残る村正です。
鏨での消し方が甘いため、押形に採ると「村」の字が読める程度に出て来ました。

村正①
村正②



「お守り刀特別展〜願いを込めて〜」9/12(土)~11/23(月)

会 期:9月12日(土)~11月23日(月)
会 場:坂城町鉄の展示館
    〒389-0601 長野県埴科郡坂城町坂城6313-2
     Tel. 0268-82-1128
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分)
入館料:500円、中学生以下は無料

古来お守り刀は、作刀、刀剣研磨、木工芸、金工、漆芸、組紐と日本伝統工芸の粋を集めて製作されてきました。このお守り刀の魅力を広く発信するため、「お守り刀展覧会」が開催され、今年は15回目の節目の年になる予定でした。
 しかしながら、100年に一度と言われる未知の感染症に世界が襲われ、4月には日本でも緊急事態宣言が発令され、すべての社会活動が中止に追い込まれました。当初お守り刀展覧会の中止も検討されましたが、逆にこのような時だからこそ、「魔を除け邪を祓う」祈りが込められたお守り刀の力で、世の中の平穏を願うべきではないかと考え、形を変えて開催することといたしました。

 今回は、優れたお守り刀を集結し、日本だけでなく世界の禍を断ち切りたいという願いを込めて、対象を広げ、過去に制作され、各展覧会に出品されたお守り刀も募集対象とする特別展として、開催するものであります。会場に足を運んで下さる方々の健やかな人生を願う展覧会となることを期するものであります。



無題

前回からあまり間が空かずでまた生品の山を拝見。
何十あるか数えずだが前回の倍以上か。
山盛りの鞘の雰囲気で大体の筋は分かるもので。この山は大名クラスかと。
大名物の山を見ても必ずと言っていいほど、豊後行平、僧定秀、貞次、則重、廣光、来国俊、来国光・・・の様な偽銘はある物で、しかしそれとてなかなか面白い出来であったりするもので。。
今回もそういう品が少し入るが、基本的には大変筋の良い品。
生茎在銘の福岡一文字。近年拝見したこの銘の太刀と全く同じ手。まだ眠っていたかと大変驚く。
生茎在銘の太刀(茎尻を僅かにつまむ)。茎先に手貫緒穴の痕跡。大筋違。縮緬肌風。昔見た弘次に非常に似る出来。
しかし銘鑑では古青江にこの名はない。
大磨上げ無銘。全身に茶色く油が固着し地刃不明。苛性ソーダで除去。
焼き幅虎徹より少し高い程度で特に突出する山は無い。
丁子刃で刃中の働き尋常でなく、各所に大房の丁子も。
刃中の錵の豊富さ、明るさが凄い。地鉄完璧。淡く映る。
誰の作か。。
この種の出来では重文まで含めこの10年で見た中の一番の出来だと思う。