鉄鎺

本日は研ぎ場にて拵え入りの小さな短刀を拝見。
その鎺が鉄製で、めずらしい御品ですので写真のお許しを頂きました。

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古い時代には作刀時、刀工自身が鉄で鎺を作り使用したと言われます。
鉄鎺は、文化財指定を受けている名刀や、奉納刀などに希に見る事がありますが、日常目にする刀に付いている事は殆どありません。
本日拝見した鉄鎺、時代は若く江戸後期と思われ、布目象嵌による家紋や縁取りの跡が残っておりますし、刀工製作の物ではなく、金工など専門職の手によるものでしょう。
この時代にも鉄鎺は作られていたのですね。 大変勉強になります。
私が過去に研磨に関わった中では、鉄鎺は2つだけです。
一つは平成11年、大和守吉道。

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これも江戸期の物ですので刀工の製作では無さそうです。
葵の文字紋入り。
こちらは平成19年。 腰が低く呑み込みが無い、美しい太刀ハバキ。

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大切っ先、長い茎の先にのみ目釘穴が空いて居たと記憶します。 姿を刀に直した訳ではなく、製作時の状態を残していたと思います(茎尻は切れている)。 所謂長巻の一種になるのでしょうか。 新々刀でたまに見る姿ですが、時代は南北を下る事は無いでしょう。
再見したい。

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