京のかたな 展示№26
少し肌立つも細かく地錵の付く大変上質な地鉄。区上を焼き落とし水影状に映り立ち、腰刃を見せ、その上は総体に低く焼き、刃中は金筋等豊富に働く。
焼き落とし水影風を見せる菊御作の特徴に、腰刃を焼く古一文字の作風を合わせ持つ、即ち菊御作でいう、粟田口、古青江、古一文字の3タイプ中、古一文字タイプという事になります。
本太刀は重要美術品に認定されており、重美全集では「太刀 銘 一」と表記され、鎺下に菊紋があるも解説ではそれについてふれていません。(認定時の写真に菊紋は写っていますので、後に入れた様なものではありません)
また本太刀は菊御作として協会の特別重要刀剣にも指定されています。
展示№22,23,24,25に見るように、通常の菊御作は菊紋のみを切り刀身自体は無銘です。
本太刀を菊御作とするならば菊紋に一の字を添えた他に類例を見ない貴重な資料という事になります。
「一」の銘は様々あり、この一文字にみるように斜めに切り下ろすものを斜一文字(はすいちもんじ)と呼びます。
この斜に切られた一の字は、はたして文字なのか、それとも符牒なのか未だ不明です。
しかし一の銘の中では一番古い手の物と考えられており、他には尚宗、則宗の在銘の品に斜一文字を切り付けた例があります(いずれも佩裏)。