大磨上げ無銘の全身押形をとる

鎌倉時代末期の大磨上げ無銘刀。
無銘ですが、適度な硬さの石華墨で鑢目をなるべく潰さぬよう、朽ち込みを埋め過ぎぬよう、時間をかけて丁寧に擦りだします。
しっかりと時間をかける事で紙に墨がたっぷりとのり、深い黒味と艶が生まれます。
銘や鑢目を潰すことなく紙に墨がしっかりのった押形は、鉄味絶妙な茎を見る様な錯覚に至ります。

錆が盛り上がった部分には石華墨を意識して逃さず当て、強い黒味を出します。
錆の盛り上がりの根本までは責め過ぎず少し白さを残す事により立体感が各段に上がります。
以前は鎬筋への意識が完全に抜け落ちていましたが、近藤先生のご指摘をいただいて以来、鎬筋を擦りだすよう心掛けています。
また茎全体をしっかり擦りだしたつもりでも、意識が行き届いていなければ実は目釘穴が明瞭に出ません。
目釘穴を美しく擦りだす作業も必要です。