粟田口国綱

研磨記録、研磨外の部に太刀、粟田口国綱を追加しました。
国綱は粟田口物の中では、姿態、鍛え、刃文ともに異色で、今回UPさせて頂く太刀も先まで力強く反る姿、変化に富む地文、強い刃沸え等、国綱特有の出来となっています。
国綱有銘の作は甚だ少なく一番知られている品は名物 鬼丸国綱(御物)ですが、他に粟田口国綱正真と首肯できる品は僅か数口に過ぎず、本太刀は新資料として注目される一口です。
粟田口国綱3



陸奥守歳長

研磨記録、新刀、山城国に陸奥守歳長を追加しました。
差し裏中央付近が顕著ですが、押形を見ると刃文が層となり上部と下部に分かれています。
上部(焼き頭側)は強く沸え流れ、下部(刃先側)は匂い勝ちです。
これは清麿のように本三枚或いは四方詰めを行う刀工の作品に表れる現象で、刃文内や焼き頭付近が鉄の合わせ目となる刀に多く見られます。
歳長全身



ステマ

ステマでした。
刃文スタンプ。 サイレンこしらえ=私でして。。
こんな使いどころの分からんスタンプでも以前から買って下さる方が居て。。
本当にありがとうございます。



全身押形を二枚描く

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南北と鎌初。
鎌倉初期の太刀。生ぶで稀少銘。腰反り高く踏ん張り付く姿が美しく、雉股茎も相俟って高い品位となる。



3月日刀保京都府支部例会

入札鑑定会

一号 脇差

鎬造り、身幅重ね少し大人しい。板目少し流れぎみ。小沸え出来の互の目で三本杉調子。焼き出し無し。

これは難しい。尖って居ないので違う可能性が高いと思うがとりあえず陀羅尼勝国と入札。

 

二号 脇差

頭に出入りがある丁子。足が長く刃先に迫る。彫り無し。

一竿子忠綱と入札。

 

三号 脇差

広直刃調で湾れ。地沸え付き所々荒い。沸え崩れる箇所があり物打付近は地に大きく散る。
鎬が低い。

大胆な出来だがこの雰囲気は興正や真改に度々見るように思う。真改国貞と入札。

 

四号 刀

先幅広めに感じる。刃三つ角が張り気味で切っ先長詰まる。
大坂の丁子。若干拳気味。

肥後守国康か国助だと思うが。。 二代国助と入札。

 

五号 刀

慶長体配。刃寄り柾。良い板目。湾れに互の目。焼きは低い。沸え散らず整い明るい。帽子倒れ。

一見直江志津。だが国広にも見えて来る。しかし国広の地鉄じゃない。良い刀。初代金道と入札。

 

イヤ


国入り
イヤ

 

一号 この雰囲気で三本杉調だと仙台か会津か。会津兼定と入札。
四号 国助か国康だと思っていたが、国助でイヤで国康も無くなった。分からないので親国貞と入札。
五号 そう言えば度々見る脇差の輝廣と同じ出来だった。播磨守輝廣と入札。

 

イヤ


国入り

 

一号 会津でイヤならもうお手上げ。あまり見ない工に入れて終わろう。鈴木貞則と入札。
四号 これももう分からない。一竿子忠綱と入札。

 

イヤ


国入り

 

一号 脇差 銘 奥州仙台住国包(二代)
二号 脇差 銘 粟田口近江守忠綱(二代)
三号 脇差 銘 井上真改 (菊紋)延宝八年八月日(二代)
四号 刀  銘 大和守吉道(二代)
五号 刀  銘 芸州広島住播磨守藤原輝廣 二ッ胴切断可為子孫之重器者也(二代)

一号は研ぎ方によってはもっと柾になる様に見えました。
四号、大和守吉道が出ないのが情けない。切っ先形状など含め造り込みもいつもの吉道なのに。。
五号は直江に入れたくなる様な良い刀です。
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左近将監恒次

研磨記録、備前古刀の部に左近将監恒次を追加しました。
左近将監恒次(鎌倉時代末期)は現存希な品ですが何度か手に取らせて頂く機会があり、2016年7月の鑑定刀(銘、備前国住左近将監恒次)に出させて頂いた品、2013年五月の鑑定刀(銘、恒次)、また2014年5月に名物の鄙田青江恒次を拝見しました。
2013年の二字銘恒次は若干違う出来でしたが、鄙田青江、2016年鑑定刀、そして今回UPさせて頂いた左近将監恒次は大変よく似たものでした。
匂い口は少し沈み心ですが、大変よく錬れた地鉄に地斑映りが立ち、古雅で味わい深い作風です。(地斑映りに関しては鄙田青江が顕著です)
恒次は同銘が古青江にあり、備前の左近将監恒次と混同されて伝わった品も多く、名物数珠丸恒次(重要文化財)、名物鄙田青江恒次(重要美術品)も古青江恒次として伝わって居ましたが、近年の研究により備前の左近将監恒次の作である事が判明しています。



刀身と押形の展示

現在薬師寺にて「噂の刀展Ⅲ」が開催中です。(開催期間:平成30年2月8日(木)~4月8日(日))
同展にて先日二日間限定で名物 大倶利伽羅廣光(重要美術品)が展示されましたが、あわせて数年前に描かせて頂いた大倶利伽羅廣光の全身押形を大塚巧藝社さんのご協力のもと、同じく二日間限定で展示して頂きました。
観覧して頂いた皆さんからは、「刀身と押形の同時展示は難しい刃文鑑賞の助けになる」と好評だったようです。

全身押形の制作には大変手間が掛かり、各展覧会で全ての展示刀に全身押形を添える事は難しいと思います。しかしたとえ数点でも押形があれば、刀身と押形を見比べる事で、初心者には難しい刃文鑑賞も要領がつかめ容易になり、刀の鑑賞に慣れている方も手に取るより遥かに見辛い展示刀鑑賞の助けになるはずです。
ただ、押形には鑑賞の補助的役割以上の意味があるとも思っています。書籍等で本のサイズに縮小された全身押形は単なる記録資料という認識で見る人が多いと思いますが、刀身の実物そのままを写し取った現物の全身押形には、刀身の持つ魅力とはまた別の魅力を感じます。

 



久々に唐筆で

脇差の全身押形を描く。

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最初は近年使っている筆で描いていたが、途中から久々に唐筆に変えてみた。
こうやるのか~と、唐筆の使い方をやっと少し理解出来た気分。