天然砥石比較 1

表面

裏面
側面

砥石硬度  2/10
研磨力 2/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

一時期よく見かけたタイプの砥石。カラスが特徴的。

茶色の筋は当たります。黒は大丈夫。
研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試し纏めた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。ですので後々変わるかも。



”地を引く”

昨日のブログで「効く効かないよりも、地を引くか引かないか、そういう判断で良い時代だったのではないか」と書きました。
書きながら、ちょっと間違った事を書いてるなぁと思いながらも、そのままにしてしまいました。
一応訂正といいますか補足しておくと、内曇りには地を引く砥石はめったにありません。
特に刃砥ではほぼ無いというくらい少ないです。
(”地を引く”とは内曇り工程の地引(じびき)や地砥の事ではなく、ヒケ傷が入るという意味です。研ぎ台や水を清潔にしても、砥石中の硬い成分により、どうしてもヒケ傷が入ってしまう物が有るんです。)

天然砥石は見た目に綺麗な物ばかりではありません。筋や皮やと硬い部分がある場合も多く、その箇所は刀にヒケ傷がつく物もありますので、事前に掘り取って安全な状態で使用します。
ここでいう地を引く砥石とは、筋などではなく、綺麗に見えてもどうしてもヒケが入る砥石です。
しかし内曇りは基本的に綺麗ならばヒケは入りません。今研ぎ場には百数十の内曇り系の砥石がありますが、地を引く砥石は一本だけです。
たまに趣味の研磨の方が刃引き写真を載せ、ヒケが入るので石が悪いやら刀に合わないなどと書いているのを見かけますが、まずほぼ100%、砥石が悪いのではなく引き方が悪いのです。



くさい砥石

しばらく前に角砥では初めて買う山の内曇質の砥石を購入しましたが、結構な研磨力でした。
普通ならグレーの部分が多くなるべく見た目に綺麗な砥石を求めるところですが、この山のこの層の質は違う様です。(蓮華などは当然まじりますが。私はカラスで効く砥石に出会ったことはありません。先輩方の評価にはカラスも入っていますので、世代でしょうか。)
グレーの部分は泥で、白い斑で刀を引く事を躊躇してしまう部分に研磨力があります。
そもそもこの砥石は見た目からの判断で普通は購入しない物ですね。やはり砥石は使ってみなければ分からない(見た目だけで判断できる時代もあったと思います。しかしおそらくですが、昔は全体にかなり高次元の砥石だらけだったのではないかと。効く効かないよりも、地を引くか引かないか、そういう判断で良い時代だったのではないかと想像します。私の想像です。)。
で、この砥石を使った後の細工場は臭いんです。独特な酸味のある臭いに包まれます。
この斑の部分の成分が臭うのか、それとも鉄を異様に卸すので鉄のにおいがしているのか。



砥石をいただきました

天然砥石を頂戴致しました。
この写真以外にも多数なのですが、内曇りが30丁以上。名倉・細名倉が10程度。
いつも好んで使っている大平の合砥も10以上。
あとは刀研師にはもったいない中山や産地不明の大判砥石が多数。

内曇り用の棚にはもう入りませんので、人造砥用の棚にあった使っていない砥石を出して入れ替える事に。
この写真以外にも箱入りの新品砥石が沢山ありますが、結局使わないので処分です。
この十数年、人造砥に関しては使う砥石が大体決まっています。良い砥石を沢山教えて頂き、様々な好きな砥石に出会うことが出来ました。
この写真の砥石達ももちろん良い石なのですが、砥石は良否よりも好みの違いが大きく、使わない物は有っても結局使わないんです。(写真中程の備水はついでに洗っただけで、また棚に戻ります)

人造砥用の棚ですが、結局五分の三以上は天然砥石に。
人造砥は好みベースで大丈夫ですが天然砥はそうは行かずなんです。様々な刀に対応するため様々なタイプの天然砥石が必要です。
同じ砥種でも出来るだけ多くの砥質を持っている方が対応力が上がります。
この様に多数の砥石を引き継がせて頂けるという事は、今後の研磨の質向上に確実につながります。