道具

私の兄はとにかく色々な道具類や、その他日常のしょーもない事に妙に興味津々な人なのですが昔、「プロ用のカミソリってなんで重いか知ってる?!」っと言う話を教えてもらった事が有ります。
その昔、理容師さん達は皆、日本剃刀を使っていました(それしか無かったからですが)。
しかし日本剃刀は常に研がねばならず大変面倒な道具です。 良い砥石も必要です(刀で言う鳴滝砥石)。
そこで一気に普及したのが、プロ用の替え刃剃刀です(T字じゃありません)。
いつも床屋さんで気持ち良くおヒゲを剃ってもらうあの替え刃の剃刀の”刃”ですが、実はホテルの備品などに有るあの切れ味最悪なT字剃刀の”刃”と大した差が無い物だそうです。
では何故そんなに切れ味の差が出るのか・・・。  本体重量の違いです。
確かに、市販の替え刃T字剃刀もちょっと高い物だと本体重量が結構有ります。
プロ用の剃刀ヘッドはやけに重い物ですが、それが切れ味に大きく作用しているなんて事には全く気が付きませんでした。
その話を聞いてからしばらくの間、備品のT字剃刀に鉛を貼り付けて使っていました(^^)
しかし柄がプラスチック製なので微妙に衝撃を吸収してしまい、中途半端な切れ味でした(-_-;
子供の頃理科で習う様な事ですが、日常では意外と気が付いて居ない事も多いんでしょうねぇ。
日本刀は重い方が良いと言いたい訳では有りません。 道具のお話でした。
次回研磨記録にはこの御刀をUPさせて頂きたいと思います。

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南北朝期の

南北朝期の御刀の全身押形を取ってみました。
簡単に南北朝と言ってしまいますが、今から六百数十年前の御刀です。
よくぞ残って居たものです。 

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作業を

全身押形をPCに取り込んでいたらこんな時間になってしまいました・・。
本日は、小反りや中島来、古青江等々をじっくりと勉強させて頂きました。ありがとうございました。
小反りとされる刀工はかなりの数にのぼりますので、入札鑑定などでズバリ当りはちょっと難しい事も有るかも知れませんが、刃がこづむ事や、地肌の傾向、南北朝期にも関わらず大変重ね厚な物が多い事、それを踏まえた上で見る特徴的な造り込みなどを考慮すれば同然にもって行くことはそれほど難しく無いはずだと思います。
中島来は、典型作で古伝通りの極めだと思いました。



御刀拝見

 本日は備前物、在銘南北朝年紀入(重刀)と、同じく備前物ですがまた別系の鎌倉後期在銘(重刀)を拝見致しました。 
備前物と言いましても、時代や流れなどによりさまざま分かれ、かなり色々とあります。
古備前に始まり、古一文字、福岡一文字、吉岡一文字、片山に移った一文字など。
そして光忠に始る長船派は長光、景光、兼光等々多数の名工を輩しつつ、鎌倉末期から室町後期まで太い流れを作ります。
それとは別にも、畠田派(守家、真守など)、宇甘(雲生、雲次、雲重など)や吉井など。
銘に「長船」と切るものの別系とされる物には大宮系、長義系、元重系、小反系など。
さっと書いてもどんどん出てきますし、本を開けばもっと色んな流れが出てきて、個々の刀工を挙げれば膨大な数に上るのが、刀剣王国備前國です。
古備前などは沸出来ですし、また下って末になると沸て来るのが普通ですが、備前と言えば「映り」と「匂い出来」と言うのが一番知られるところです。
備前刀は現存数も大変多いですし研磨させて頂く機会は大変多いものです。
ひどい錆身などを研がせて頂く事もまま有り、いつも思う事ですが、研ぎ減ると疲れの進行がとても速いと感じます。
「匂い出来」と言う事も関係するのか、それとも備前刀の作刀方法全体から言える事なのかどうかは分かりませんが・・。
室町中期~末にかけての物は、焼きの高い乱れ刃であっても、減ってくるとどんどん焼きが下がり、湾れに変わり、最終的には直刃に近い刃文になってしまいます。(身幅は変わらず平肉が落ちてしまうと言う場合です)
切っ先も肉が落ちると焼き幅はそのままでも一気に染みてしまう事が多いものです。
こんな風に疲れてしまうのは誠に惜しい事なのですが、残念ながら廃刀令以降手入れが行われず錆び放題と言うお刀が沢山あり、この様な事が起こってしまいます・・・。 
 なんだか話が脱線してしまいましたが、例えば入札鑑定で「備前」と国に入ったとしても、それから先を絞り込む事はちゃんと見えて居なければなかなか大変ですね・・・。
本日拝見した御刀ですが一つは造り込みに惑わされなければ同然と持って行ける物です。
もう一振りですが、特徴を見つけようと思ったのですが私には分かりませんでした。
しかし、過去に拝見した同じ系の物と全く同じ造り込みで有り、刃文の大まかな調子が全く同じ雰囲気ですので、もっと細かく一つ一つの乱れを記憶して行けば、判別は可能なのだと思います。
先日の支部鑑定会で某氏が、「銘を当てる事を考えてたら出来の事を全く見られない(出来の良し悪し、特に良さに関して)ので、ちゃっちゃと入札を済ませて来た。 あとはゆっくり鑑賞するわぁ(^^)」っとおっしゃって居ました。
そうなんですよねぇ。
鑑定、鑑賞、それぞれに良さや楽しみ方が有るのです。
御刀をみるには落ち着いた心としばしの時間が必要なのですねぇ。
でまた逆に、慌ただしく生きて居る人が落ち着いた気持ちを取り戻すために、御刀を鑑賞すると言う事なのだと思います。
私もまたゆっくり鑑賞させて頂く時間を作りたいと思います。
ところで最近「歴女」ブームで、鑑賞刀も光を浴び始めたと言う事が新聞に載っていましたが、切れ味への興味ばかりでなく、地刃をゆっくりと鑑賞してくれる方達も増えるとよいですね。 (女性の場合は切れ味などよりも精神面への興味が多いのかも知れませんが) 



神戸で刀

今日はお仕事で神戸へ。
昨年末は御刀の事で淡路に行かせて頂いたのですが、「明石海峡大橋」、まさにこの下が阪神淡路大震災の震源だったのですね。

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この時初めて橋を渡りましたが、「よくこんな所に橋を架けようと思ったもんだ!」っと感激しちゃいました。
長さ70センチほどの鉄を一生懸命眺め、何日も何日も磨く仕事。
全長4キロ近くに及ぶ鉄の橋を架ける仕事。
人生色々です。
今日は久々に神戸の街でしたが、震災の影響も有りほんとに新しくて美しい街ですね。
あんな大変な壊滅的状態からこんなに美しく復興するのですから。 人のちからは凄いです。
話はちょっと変わりますが、他府県の大きな町もですが、神戸は特に入り組んで居て信号が遅くてホント疲れます(-_-;
京都はどんな大きな交差点でも信号変わるの早いです。 ほぼ十字路しか無いので。
(※道も狭いのでそれほど大きな交差点は有りません ※京都駅前はスクランブルなので変わるの遅いです)
 



こんな感じに

大体こんな感じの刃文です。

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 疲れたのでちょっとブレイク。とあるブログで見つけました。



御許可を頂きましたので

研磨記録へUPの御許可を頂いた御刀の全身押形をとらせて頂いております。(鞘下地状態)

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今まで経験した事が無いくらい複雑な刃文ですので、おそらく途中で何度か心が折れそうになると思います(-_-;
しかし、この御刀は全身をとってこそ意味が有ると感じましたので気合で書き上げます。



名刀拝見

昨日は、お客さまにお越し頂きまして名刀を鑑賞させて頂きました。
 太刀 銘 景秀     (特別重要刀剣)
 脇差 銘 備州長船兼光(延文年紀)(特別重要刀剣)
 太刀 銘 包永     (特別重要刀剣)
 太刀 銘 守家     (重要刀剣)
 刀  銘 信濃守國廣 (重要刀剣)
いやはや本当に凄い御刀ばかりでまさに「独り新春名刀鑑賞会」状態で、完全に名刀を独り占め、至福の時を過ごさせて頂きました。
一振り一振り所見を書かせて頂くと、どんどんどんどん長くなってしまいそうですので、それも独り占めとさせて頂きます(^^)
本当に勉強になりました。ありがとうございました。
また、私のブログをご覧になって頂いていると言う事で、イカの缶詰ではあまりに寂しかろうと最高の当てを頂戴致しました。
ありがとうございました!
さて、一昨日は京都支部新年会で、一本入札にて鑑定会が行われました。
10振りと聞いて居たのですが会場に着いてみればなんと12振り!
毎回毎回鑑定刀を確保する事は、本当に大変だと思います。
そんな中、一度にこれほどの数の御刀をお集め頂き勉強をさせて頂ける事は誠に幸せです。ありがとうございます。
しかし、さぁ大変だ(^O^)♪
私の眠れる脳細胞たちは神経細胞を伝い上手くつながってくれるのでしょうか・・・。(勝手なイメージの表現です)
簡単に。。
一号 平脇 湾れ互の目。彫り有り。
二号 平脇 乱れ刃、流れ肌。
三号 刀  腰樋、互の目、反り深め。
四号 平脇 湾れ刃、大変詰む肌。
五号 刀  棒樋、添え樋、乱れ刃。
六号 平脇 棒樋、直刃、肌立つ。先反り。
七号 刀  薙刀直し造り(横手有り)、沸える刃。
八号 短刀 棒樋、互の目、先で内反り、重ね厚。
九号 刀  丁子刃、映り。
十号 短刀 5、6寸。互の目。返りを深く焼き下げ。
十一号 刀 中直刃寂しい。硬い。
十二号 短刀 無反り、冠落し。梵字。直刃。
入札内容
 
 一号 堀川國廣  当り
 二号 初代金道  国入り準
 三号 長船政光  準
 四号 水心子   イヤ
 五号 長船勝光  当り
 六号 長船則光  国入り
 七号 薩州正幸  同然
 八号 長船宗光  同然
 九号 河内國助  同然
 十号 長船勝光  当り
十一号 貝正興   イヤ
十二号 手掻包真  同然
答え
 
 一号 堀川國廣
 二号 山城慶隆
 三号 藤島友重
 四号 水田国重
 五号 長船勝光
 六号 長船盛光
 七号 波平安氏
 八号 長船賀光
 九号 そぼろ
 十号 長船勝光
十一号 源正雄
十二号 手掻包俊
天位の方の札を見せて頂きましたが、当り当り当り当り同然当り・・・みたいな感じでした。
お酒にめっぽうお強い御方ですが、御刀にはもっとお強い! 参りましたm(_ _)m

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新年ですので

一月と言う事で新年を迎える忙しい月です。
明日(今日)は親戚たちが仕事場に来てワイワイガヤガヤだと言う事なのですが、京都支部新年会が有りますので私は少しだけその場を離れ、しばし新年会に参加させて頂く事にします。
京都の新年会は恒例の一本入札でして、今年は10振りを一本入札で行うのだそうです。
(通常、入札鑑定とは出題刀は5振りでそれぞれ3回を限度とする入札で点数を競います。 札を外した場合、各入札ごとに「イヤ」「国入り」「通り」「時代違い」などのヒントが出され、それに従って次の答えを探り、改めて入札を行います。)
一本入札とは文字通りヒント無し、一発勝負の入札で点数を競うもので、記憶力はもちろんですが知識と経験、直観力、不惑の心、勇気、気合、割り切りや切捨ての心、諦めの速さなどを自問しつつ入札を行い、大変なカロリーを消費し誠に辛いものなのですが、なかなか楽しい時間です。
入札の成績には、天位・地位・人位そして次点と順位がつくものなのですが新年の恒例で豪華商品?!(^^)が出ると言う事ですので、いつもは100点を目指して居る私ですが、なんとか「天位!」を目指して入札してみます(^O^)♪
さぁさぁ。どんな御刀に出会う事が出来るのか、楽しみです!