京都府支部秋旅行

日刀保京都府支部、秋の研修旅行が久々に行われました。
参加者は20名弱。こんなに多い研修旅行は私が入会して以降では初めてだと思います。
行き先は長船刀剣博物館と大山祇神社。
長船刀剣博では現在『秋季特別展「赤羽刀とたどる戦後の刀剣史」』が開催中で、学芸員の杉原賢治先生がそれぞれの作品について詳しくご解説下さり、見識を深める事が出来ました。
私は赤羽刀には正直なところそれほど良い刀は無いと思っていたのですが・・・展示を見て大変驚きました。名品多数。
会期はあと少し。長船刀剣博へgo!です。

大三島は初めて行きました。大山祇神社。
事前に「大三島の刀剣」を購入していたので大体は把握しているつもりでしたが、やはり実物の力は凄いですね。
まず一階の薙刀群が凄く。それから大太刀、古太刀と続きますが、ほぼ全てに鉄鎺が着装されています。
支部会員さんが「鉄鎺ってこんなにも有るものなんですね(笑)」と冗談を仰られましたが、正に。
こんなにも次から次へと鉄鎺が続く体験は他では出来ないでしょう。
そして展示の後の方で不意に金着鎺が。言葉を選びますが、この並びでの金着は私には強過ぎてダメでした。金着鎺に抵抗を感じるなんて初めての体験です。
刃文を見せるための照明などはほぼ有りませんが、私は一切気になりませんでした。もうそこに存在しているだけで十分過ぎて。






わかやま歴史館「南紀重国とその時代」

昨日研ぎ場にて、南紀重国の脇差を拝見しました。初代は久方振りかもです。
重ねが厚く、鎬がやや高く、鎬地幅がかなり広い造り込みです。
地錵がよく付き、全身に細かな地景が著しく現れ立体感が凄い地鉄。
直刃調で南紀の大和伝と分類されるタイプですが、柾気は無く、刃中の錵は大和五派中でいえば手掻よりも当麻に匹敵するレベル。(むしろ凌ぐと思いますが)
「新刀鍛冶で最も技量が高いのは誰ですか?」と問われると、いつも即答で「南紀です」と答えて来ましたが、今後もそれは変わらないですね。やはり凄い刀を造る人です。
駿府の包国刀も拝見。こちらは完全な手掻伝。反りはかなり浅く寛文新刀風ですが、特に物打下から中央付近の真っ直ぐ感が強い姿。包国は乱れ刃しか見た事が無く、完全な大和伝は初めての経験で大変勉強になりました。

現在、「わかやま歴史館」にて「南紀重国とその時代」が開催中です。
重国はじめ、包国や安廣等多数の展示があります。南紀重国の現存数は決して多くなく、鑑定刀等に出て来る事は稀です。
新刀の最高峰といえる南紀の作品をこの機会に是非ご覧ください。



肥前刀、内曇を引く

これの内曇を引く。
先日、細名倉までの工程は大変良い砥当たりだと書いたが、内曇も引きやすいとは限らない。
という事で、やはり内曇工程は少々苦労をする事になった。
近年メインとして使用してきた内曇砥は軒並み効かず、久々にHP「天然砥石比較」の砥石№61を砥台に。
天然砥石比較 60,61 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
この砥石、比較的柔らかい砥石という認識で使用していた時期もあったのだが、「砥質が硬く研磨力も弱い」との認識へと変化し使わなくなっていた。
久々の使用の結果、砥石№20,22,23,24,25,26と同質、或いは非常に近い砥質と判明。
天然砥石比較 20 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
天然砥石比較22〜26 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
これらより多少硬い気もするが、研磨力は非常に高い。
砥石比較ブログを書いた当時、砥石№61の研磨力を「4」としていたが「6~7」に訂正したい。
結局この肥前刀はかなり硬い鉄という事になるのだが、硬さと研ぎ難さは必ずしも比例するものではない。
今回の様に硬い鉄であっても細名倉までの下地研ぎでは非常に良い砥当たりと感じる事もある。
そして今は内曇に苦労している訳だがこの後仕上げでも苦労するかといえば、それもまた単純ではない。
この刀は「差し込み研ぎ」で研ぎ上げる予定だが、おそらく非常に研ぎやすいと感じながら仕上げ研磨を進める事になるだろう。