刃艶をつくる

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寒くなる前に刃艶を。
前回はいつ頃作ったかと思い、ブログで確認すると約1年前。
前回も同程度の量を作ったので大体一年でこれくらいの消費で、刃艶の消費量は多いタイプの研師だと思います。
見た目は悪いがこの石は確実に良いと確認済みの物ばかりで、私の中では最上クラスの一種。
使えるか使えないか分からない物に、切って磨って貼ってと手間を掛けるのは嫌なものですが、良いと分かっていると気持ちの苦労は大分軽減されます。

研師暦が長くなるほど、同じ刀を研いでも砥石の減りは少なくなります。
経験が浅い人に下地をさせたり内曇りを引かせてみると、あまりの砥石の減りに驚かされます。
内曇りなどはそれが分かりやすく、刀一振りに内曇りを効かせるだけで、自分が引く時の2倍どころか3倍か或いはもっと減っているのではないかと思うほどに減ってしまいます。
経験は大事です。
刃艶はそれとはちょっと別の話。

 



柾目に丁子

そういえば、先日の鑑定刀5号、完全な柾目に派手な丁子刃。
普通なら柾肌に刃文が引っ張られ、匂い口が柾目で切られ食い違いの働きが現れたり、砂流し状になるなどの現象が起こるところですが、その様な箇所は一切なく、刃中に柾状の匂いの筋が見て取れる箇所が僅かにあるだけでした。
研ぎの影響もありますがかなり強く現れる柾肌に、破綻の無い丁子刃。現代の目線での好みや良否は別にして、当時はかなり斬新なものだったと思います。



「光抱いて〜刀工 宮入小左衛門行平展」

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宮入小左衛門行平刀匠の個展、「光抱いて」が開催されます。
一門の川﨑晶平刀匠、河内一平刀匠、根津秀平刀匠、上山輝平刀匠の作品も賛助出品。

会期:2019年11月20日(水)〜26(火)
会場:日本橋髙島屋S.C.本館6階美術画廊
東京都中央区日本橋2-4-1 Tel03-3211-4111
時間:10:00~19:30(最終日は16:00閉場)

《ギャラリートーク》
11/23(土・祝)15:00から

全日本刀匠会HP



日刀保京都府支部 入札鑑定会

今回は本部より日野原大先生を講師にお迎えし入札鑑定会が開催されました。

一号 刀

重ね厚め、若干細身で鎬が高い。反りが浅いが鎌倉時代の刀。
直刃調子。よく働く。明るい。物打から横手下の冴えが好き。片落ち風になる部分の谷など、少し逆がかる働きがある。大体丸い帽子。返りが5㎝ほどある。少し棟を焼く。
板目よく詰む。全面に強めの錵映りで、ここまで良い刀でなければ再刃だと思ってしまうほどの強さ。

映りの錵がもう少し弱くて乱れていれば雲類に入れたくなる。
刀身中程の少し焼きが下がる部分が来国光に見える。 来国光と入札。

 

二号 太刀

反り深い。踏ん張りが強く、応永備前の太刀。 腰を開く丁子や互の目。 研ぎが古く、強い切り込みもある。差し込み風だが弱い刃取りを行っていたものか。
乱れ映りが鮮明。
私は康光と盛光の太刀の違いを判別できないので、以前見た品のイメージで。 長船康光と入札。
 
 
 
三号 寸延

少しフクラ枯れ、応永姿。刃の高低は少ない。二号とはタイプの違う映り。刃錵が付き、錵の部分は明るいが匂いは沈む。
南北朝の品だと話す声が何度も耳に入ってしまう。。
二号が康光で、三号が盛光、応永備前代表工が並んでいるのかなぁと思いつつも答えは南北朝だとの声に引っ張られてしまう。。
ちょっと一旦離れる。
 
 
 
四号 刀

少し反る。中央から横手下に掛けてぽってりした姿。刃の調子が虎徹。
地刃明るい。多分かなり硬い地鉄。少し前に研磨した虎徹の苦労が思い出される・・・。
虎徹帽子。 興里と入札。
 
 
 
五号 刀

総柾目が強く現れる。焼き高めの丁子刃。足等、刃中の働きは少ないが、刃文の形や調子が非常に上手く、福岡一文字をよく再現出来ていると思う。
この刃は初代是一だと思うが、今まで研磨させて頂いた是一でこの肌は無く、入れられず。。
焼き刃の質は全く違うが、ちょっと分からないので大慶直胤と入札。
 
 
 
三号、この刃は小反だと思う。南北朝で家助だと何度も聞こえて来るが、ちょっと入れたくない。。
家久って居た気がするので、小反家久と入札。
 
 
 
同然
同然



 
 
 
三号、ん?ちょっと惑わされ過ぎか。康光に。
五号、こりゃやっぱり是一。
 
 
 
同然
同然
同然


 
 
 
一号  刀 無銘 伝了戒   (重要美術品)
二号 太刀  銘 備州長船盛光(特別重要刀剣)
         応永十二年八月日
三号 脇差  銘 備州長船家助
         応永廿三年二月日
四号  刀  銘 住東叡山忍岡邊長曽祢興里作(藤沢乙安コレクション)
         延宝二年六月吉祥日
五号  刀  銘 武蔵大掾藤原是一

初代是一、私はたまたまあまり見る事なく来たのですが、柾目がスタンダードという解説。今まで研磨させて頂いた詰んだタイプの方が少数のようです。勉強になりました。
先ほど銘鑑を見たら小反に「家久」は居ませんでした。



現代刀の入札鑑定会

第一回現代刀目利き認定大会に参加させて頂きました。

鑑定刀は30振り。
制限時間2時間の一本入札。
当然ですが出題刀工の事前発表は無しです。

1~24号が太刀・刀、25~30号が短刀と剣。
中に一振り、人間国宝の故宮入行平刀匠の作品が含まれており、当てると宮入賞。
開催前、一応どんな作品が出そうかある程度想像し、見慣れた作品も多いのではないかと予想していたのですが、直前の刀匠さん方の話では非常に難しいとの事。。

鑑定開始。
入札用紙下部に、30名の出題刀工銘と番号が書かれています。
上部の出題番号枠1~30にその刀工番号を記入します。

普段の入札鑑定は5振りを1時間半程度で行うわけですが、今回は一本入札とはいえ30振りを2時間。結構ハードです。

まずざーっと拝見。
刀工名に対し、予想する作風の刀が足りない、或いは多い・・・。
涛乱が二つある・・・清麿が一つしかない・・・備前伝の太刀の識別が・・・などなど。これは難しい。
30刀工中、過去手に取り拝見した経験は11刀工。 現代刀に対する経験不足を実感です。

 入札結果

   ~答え~     ~入札~

1  上山輝平    上山輝平
2  木村兼光    木村兼光
3  河内一平    河内一平
4  久保善博    久保善博
5  明珍宗裕    石田國壽
6  藤原宗永    加藤慎平
7  三上貞直    三上貞直
8  根津秀平    根津秀平
9  宮入小左衛門行平 宮入小左衛門行平
10 月山貞利    月山貞利
11 月山貞伸    月山貞伸
12 坪内裕忠    藤原兼房
13 尾川兼國    藤原宗永
14 松葉國正    松葉國正
15 川崎晶平    川崎晶平
16 藤原兼房    宗昌親
17 横井彰光    藤田國宗
18 宗昌親     尾川兼國
19 川島一城    明珍宗裕
20 小宮國天    小宮國天
21 曽根正法    吉原國家
22 石田國壽    川島一城
23 松川清直    松川清直
24 宮入行平    宮入行平
25 藤田國宗    横井彰光
26 赤松伸咲    曽根正法
27 満足弘次    坪内祐忠
28 瀬戸吉廣    赤松伸咲
29 加藤慎平    満足弘次
30 吉原國家    瀬戸吉廣

mekiki
頑張った結果、現代刀目利きに認定して頂く事が出来ました~
研師が一般の参加者さん達に混じり目利き認定なんて・・・と思われてしまうかも知れませんが、一現代刀ファンとして本当に嬉しかったので載せてしまいます。。

上記入札結果を見て、私の混乱っぷりが伝わると思います。
それと何より、この入札鑑定の楽しさが伝わるでしょうか。
過去の全入札鑑定会の中で、一二を争う楽しさでした。
また是非開催されて欲しい鑑定会です。

もっと鑑定精度を上げたいのですが、現代刀を拝見出来る機会もそれ程多くはありません。
何故機会が少ないか、それは普段の入札鑑定に現代刀が出ないから。
私が鑑定刀の当番の時、現代刀を使わせて頂いた事が何度かありますが、残念ながら、古く見える現代刀に留まっています。
新刀らしい新刀、新々刀らしい新々刀は沢山並ぶわけですし、鑑定会に現代刀らしい現代刀が出題される機会がもう少しあってもよいのではないかと感じます。