大和物を

度々ブログに書きますが、大和物が好きです。
とくに野致を求めているわけでもありません。 なんでしょかこの魅力は。
渋い味わいと言ってしまうと簡単に済んでしまっておもしろくないのですが、それが一番正しい表現かも知れません。

当麻と龍門を拝見。
なんですかこの凄さは。
勝手な想像ですが、バーッとガーッて造ってたらこんなん出来てたんでしょうか・・・。
なんだかそんな気もするんです。 それで、100年以上経って細かい天然砥を当ててみたら、おいおいなんやこのカッコいい地刃は!と言う感じかなと。
あ、計算された美だったらすみません、南北朝以前の大和鍛冶の皆さん。
大和
先日来描いていた丁子の押形も未完成ですが、時間の都合で別の全身を描きます。
そしてこれも大和物。
これでも二尺四寸あるのですが、未完成の丁子の大きさは圧巻です。



上半期が

私は年度で区切ると言うより、お盆で一年の半分が終わり、大晦日で一年が終わると言うイメージでいます。
職人はそう言う人が多いかも知れませんね。
お盆とお正月、田舎に帰る時のお小遣いを貰えるのが楽しみでした。

今年の上半期を考えると、近年になく恵まれた環境にありました。
ここのところ、国宝と重要文化財の刀剣を手に取って拝見する機会を複数回頂き、十数振りを手に取って拝見、名物刀剣や重要美術品、特別重要刀剣を含めるとかなりの数にのぼります。 研師にとってこれは本当に貴重な時間でした。
しかしインパクトのある刀として考えれば、四振りの清麿でしょうか。
茎味や手触りなどは左行秀等と大差を感じませんが、上身のインパクトは別次元です。
好みは分かれるとは思いますが、このインパクトを軽視すべきではないと感じます。

さて、お盆は玉置神社に行ってみました。
IMG_1519
紀伊山地の山々をひたすら登ります(車でですけど)。

IMG_1523-1
玉置神社駐車場到着。
この日は雲が低く、雲より上に。
雲が体をどんどんすり抜けて行くので「雲ってほんまは乗れへんのやぁ!」っと子供達は喜びます。
写真が小さくて確認出来ませんが、中央付近の尾根に私の母の実家があります。

調子よく先に進んでいた長男がキャーっと悲鳴を上げながら戻って来ました。
IMG_1540
参道で青大将。
2メートルを超えるのでカメラに入らず。
子供らは町の子なんでさぞ驚いた事でしょう。
お父ちゃんには谷川を銀色になって泳ぐモグラの方がインパクトがありますが・・。

IMG_1574-23
懐かしい境内を廻り本殿へ。
歳をとるごとに思いますが、都から遠く離れた山奥の空間のこの空気感は凄い。

IMG_1569
私もそうだった訳ですが、地元の人って、遠くから何時間もかけて参拝に来られる方の気持ちって案外分からないものなんですよねぇ。

さてさて、娘に「好きなものの絵を描いて」と言ったらぞうさんとかえるさんを描いてくれました。
IMG_1585-1
初めてきいたのですが母は太平洋戦争中、十津川上空を飛ぶB-29の編隊を見た事があるそうです。
雲が渦を巻いて、その中を割って飛ぶB-29の編隊。
母親に抱えられ防空壕に駆け込んだそうですが、まさかあんな山奥には一発も落とす訳もありません。
しかしもともと高い所に住んでいる訳ですから低空で本土に侵入するアメリカの巨大な爆撃機がどれだけ恐ろしく見えた事か。
それが何日で何機いたのかが分からないのでどの空襲に向っていたかは分かりませんが(或いは帰っていたのかも)その時、何千、何万の人が死んだのかも知れません。
今の私の娘と同じ歳の出来事です。
当時の子供達はこんな無邪気な絵は描けなかったんですか・・・? 無茶苦茶ですね。



佩き表

片面
朝から終日押形を描く。
佩き表の七割ほど出来たでしょうか。
今日はこの辺で集中力の限界です。

私は例えば新刀の深い匂い口も、古刀の繊細な働きも基本的に筆一本で済ませてしまうタイプなのですが、今回は二本で試してみた。 なかなか良い具合。
もしかしたら備前伝には一本では限界があるのかも知れない、が、わからない。
上手な人が描いた原本が有ればどれ程価値ある手本となるだろうか。
これは刀の研磨でも他の仕事でもなんでも同じだと思うが、好みの上手な研ぎの刀があれば、その刀をずっと手元に置いて手本としたいと思う。 しかし現実ではそうも行かず、ただ試行錯誤を繰り返す。
身近に手本となる人が居る人は大変恵まれている。
そう言う環境にある人はその価値を理解しなければならない。



筆入れのつづき

IMG_1487
とりあえず片面、ざっとですがつながった。

IMG_1486
八木ノ嶋の原石を試す。
上部は皮状だが刃物を当てる事も可能だった。
しっかり試したのはこの反対面。
やけに良い気がする。
菖蒲谷
その後、各種奥殿を試す。
ありゃ?全部良い石に感じてしまう。
もしかしたら基準になるはずの小刀が軟らか過ぎる可能性が。 多分間違いない。
しかし念のため、右の「切る」石は切って試して見る事にする。
その時に先日買った本命の八木ノ嶋原石もカットしたい。

で、改めて今日試した八木ノ嶋の原石、
IMG_1486
厚さは5センチ程。
真ん中に、先日買った八木ノ嶋巣板に近い綺麗な層が挟まれている。
そしてその上に、八木ノ嶋特有の模様の層が見える。
綺麗に角取りし製品化された物からはイメージ出来て居なかったが、こんな隣り合った層だったのか。
IMG_1485



筆入れ

墨
今日は時間がとれずこれまで。
墨2
分かってます、皆まで言うな・・。
そうです、荒いんです。難しいんです。

刀の焼きいれ現象って凄いんです。
実際の刀の刃文とは、絵画のデッサンのタッチの様なバサバサと汚い部分は皆無です。
錵、匂いは粒立ち、それにより構成される線は奥深く滑らかです。
私は墨で筆書きですが、筆使いが難しく、滑らかに描くのが難しいのです。特に備前伝が苦手で。
鉛筆でもシャーペンでも筆でも、押形の上手な人は刀の刃文がどれだけ繊細で美しいかと言う事を心底理解しているんだと思います。



全身押形 刃文の下書き

今日は一日中細かい作業が続き、首の負担を軽減するためにプラレールの橋脚に頭を乗せて作業をした。これが非常に具合がよい。
全身2
夜は刃文の下書き。
日中のダメージが大きいため片面で終える。



押形を

紙
午後から、ちょっと久々に全身を描く。
80センチを超える太刀。
輪郭
夜には輪郭完成。
明日から下絵に入る。



小刀教室に

奈良市主催のキッズホリデークラブにて「刀鍛冶さんから学ぼう(五寸釘の小刀作り)」と言う催しが行われ、私も研ぎのお手伝いに行かせて頂きました。
刀鍛冶さん達が各地でもうかなり長いあいだ続けておられる活動だそうです。
今回は多数の応募の中から抽選で40名弱のちびっ子が参加しました。小学校低学年の子が多かったかな。女の子も多数来てくれていました。
kogatana
敢えてちびっ子達が写らない様に撮ったのでこんな写真ですが、皆一所懸命槌を振るい、全員が頑張って五寸釘ペーパーナイフを作り上げる事が出来ました。
私が研ぎを手伝った子達、もれなく全員「ありがとうございました」と言ってくれました。 みんなエライね。
私も小さい頃、自分で作ったルアーやナイフなどに、もの凄く愛着を感じ、ずっと大切にして居ました。
研師になった今でも、自分で作った小刀には嬉しくて仕方無い気持ちがずっと続きます。
このちびっ子達も刀鍛冶さんといっしょに作った五寸釘ナイフから様々な事を学んで欲しいと思いました。

今回は講師として刀鍛冶6名、研師2名の参加でした。
ペーパーナイフを研ぐ砥石は、ホームセンターで売っているグリーンカーボンの荒砥でかなり軟らかい石、それ一本で完了です。
ちびっ子達に研ぎ方を教えながら、最後は研師が研いで仕上げてあげます。
刀鍛冶さんが前工程のベルトサンダーでほぼ仕上げてくれていますので研師が研ぐのはほんの2,3分でしょうか。

今回参加のもう一人の研師。 私より大分年下です。
以前内曇を引く所を見た時、これは凄いと思っていました。
今回たった一本の荒砥でちびっ子が作ったペーパーナイフをちょっと研ぐだけですが、上手い人の動きは凄いです。
刀職は展覧会の催しなどで刀剣研磨の実演をする機会などがあるのですが、この人の横での実演は恥ずかしくて出来ないですね。
また新たな目標が出来てしまった。



若狭砥

wakasa
刀剣研磨の地艶工程に使用する砥石を鳴滝と言う。
”鳴滝”とは地名で、砥石で言う場合はその近辺や特定の山で採掘された石をそう呼ぶ。
しかし刀研師が地艶の事を”鳴滝”と言う場合、実はどの山から採れた石かを意識しない事が多いかも知れない。つまり刀剣研磨の世界では”鳴滝”と言う呼称は産地を指すと言うよりも、地艶砥の総称として使われているのではないかと感じる。
結果、地艶として流通する砥石には様々な山の石が入り混じるわけだが、その中に若狭砥がある。
若狭(福井県)で仕上砥が採れる事は仕事で刃物を研ぐ人や刃物研ぎが趣味の人意外にはあまり知られていないかも知れない。
硬質な物が多く、研磨力が強い。よい石に当たれば上質な地艶として使用出来るはずだ。
残念ながら今日試した石は地を引く。地艶としては致命的。研磨力は強いのだが・・。



原石は愛おしい

mizu
水木原の原石はかなり持っていたのですが、躊躇無くどんどん切り刻み、面積の広い板はもうこれ一つしかありません。
これで約12kg。
yagi
先日買った八木ノ嶋はみょうに愛おしく、まだ手付かずです。
普段なら平気で直射日光の当たる窓際に置いてたりするのですが、気になって日陰に避けました。
既に端の方は浮いて来てますし、今更気を使う様な物でもないのですが、何故か気になります。
もしも切る勇気が出たらまた切りましょう。 そして試してみましょう。
弾力があって研磨力が強い砥石だと思って居るわけでは無いんです。 ただただ、原石だと嬉しいだけです。