京都非公開文化財特別公開

令和2年度 第56回 京都非公開文化財特別公開」が開催中です。
以前研磨させて頂きました賀茂別雷神社様(上賀茂神社)御所蔵の刀剣類も現在公開中です。
公開期間等は各公開場所により異なります、詳しくは下記HPをご覧ください。

 公益財団法人 京都古文化保存協会
 公開スケジュール



肥前忠吉大小(八代)

 刀、銘 肥前国忠吉
脇差、銘 肥前国忠吉

49回目は八代忠吉の大小です。
肥前上三代、つまり初代忠吉(武蔵大掾忠廣)、二代近江大掾忠廣、三代陸奥守忠吉、この三工の技量の高さは既にブログでもご紹介させて頂きましたが、肥前刀の凄さは代が下がっても作刀技術を高水準で維持し続けたところにあります。
これは刀工個々の技量もさることながら、原料の調達から人材確保に物流等々までを含めた産業としての完成度の高さといえるでしょう。
作刀数から考えて初二代の時点でこの産業としてのノウハウが既に確立されていたと思われますが、それを幕末~明治に至るまで続けているのです。
代を重ねた刀工は各地に存在しますが、その多くは代が下がるにつれ師伝から離れ平凡な作品になってしまいます。
しかし忠吉は四代以降も全てが肥前刀然とした作風で、いずれも高い品質を誇ります。
押形の八代忠吉大小は嘉永~安政頃の新々刀になるわけですが、上三代と変わらず一目で分かる肥前刀独特の直刃を焼き、地鉄は単に詰んだものにはならず、趣のある肌模様を頃合いに見せ、地錵が付き地景が入ります。
仔細に拝見しましたが、上三代に譲る点は皆無。改めて肥前刀の凄さを思い知る刀です。

初代忠吉
二代近江大掾忠廣
三代陸奥守忠吉
三代陸奥守忠吉



助包

太刀、銘 助包(国指定重要文化財)

48回目です。
助包は、古備前と一文字に同名で数工存在し、銘の書体は数種あります。
また銘の大きさも大中小があってそのいずれもが別人と考えられています。
一説には小振り銘を古備前、大振り銘を福岡一文字といいますが、実際には小振り銘にも福岡一文字と認められるものが、また鎌倉初期古一文字に大振り銘もあって、銘のみでの判別は容易ではありません。
今回UPさせて頂く助包は大振り銘で、先述の説で見れば福岡一文字となる訳ですが、各刀剣書に掲載時の本刀の分類は、古備前とするもの、一文字とするものと分かれ、様々な見方があります。
この助包と同種の大振り銘の古一文字は、本作に比してかなり古雅な出来ですが、ここで忘れてならないのが国指定文化財刀剣の健全さです。
日常接する古名刀はどうしてもある程度は研ぎ減っている物が多くそれを基準にみた場合、殆ど減っていない文化財指定品を手にしたとき、時代を若く見誤るきらいがありす。
例えば長光などでも本当に減っていない丁子の匂い口はよく締まり、河内守国助など新刀を見るようです。

また、健全な刀身に表れる映りは暗帯部との境に匂い口状の縁を持つ乱れ映りとなり、肉が落ち淡くなる前の映り本来の状態と考えられます。(映りにも様々なタイプがありますので全てがそうとは限りません)

先日も所在不明文化財について書きましたが本太刀も以前は所在不明リストにあり、その後現所有者により文化庁への届け出がなされ、無事所在確認となりました。
刀身には錆等があり修復が必要と判断され、文化庁への正式な手続きの上、割り鞘と研磨修復を行った次第です。



所在不明文化財

以前所在不明の国宝・重要文化財についてブログに書いた事がありました。
 所在不明の国宝・重要文化財(2015)

文化庁がこのリストを発表して以来、各方面の意識の高まりもあって発見が相次ぎました。
久々に文化庁HPのリストをみると画像付きになっています。
文字情報だけでは気付きませんでしたが、画像で見ると最近拝見した重文も何点か不明リストに。
刀は同じ銘や同じ寸法の物が多数ある訳ですし、特定には画像や押形などの情報が不可欠ですね。
登録審査でも登録証の紛失などの場合、台帳記載内容を全国の教育委員会に照会するのですが、やはり文字情報だけでは無理があります。