野中鉄工(宮甚)さんから鋏研磨のご依頼を頂き研がせて頂きました。
鋏は実用の刃物ですので通常はそれに適した鋼材を使用し製作されていますが、今回は美しい刃文と地鉄を求め、初めて玉鋼(日刀保たたら)を使用し製作されたそうです。

玉鋼は扱いが難しく、焼き入れ温度の僅かな違いで刃の高さが変わってしまいますし、何から何まで一からの試行錯誤で、苦労の末の一本との事でした。
にしても、鍛錬から焼き刃土の調合や焼き入れ等々、玉鋼の扱いに慣れた刀匠のアドバイスなどは全く無しでこの様に完成出来る物なのですか。。凄いです。
研磨の方ですが、構造を理解していない素人の私が下手に触ると切れない道具になってしまいます。造り込みを崩さぬ様に注意しつつ、刃文と地鉄を美しく、そんな意識で研磨させて頂きました。



木下正宗が。

第106回企画展「戦国上州の刀剣と甲冑」 | 群馬県立歴史博物館 (pref.gunma.jp)

「戦国上州の刀剣と甲冑」という展覧会が「群馬県立歴史博物館」で行われます。
展示品の詳細は分かりませんがHPを見ると木下正宗が展示されるようです。
昔、重美全集と相州伝名作集で見て以来、ずっと気になる刀の一つでした。
個人蔵という事ですが、関東では度々展示され良く知られているのでしょうか。
私多分展覧会等で拝見する事は叶っていませんが、今も興味の薄れない刀です。
もしかして佐野美の正宗展で出てたのか?と思い図録を見ましたがやはり出ていないですね。
相州伝上工は難しい刀です。
ごく最近も享保名物含め相伝上工の極め物を幾つか研磨させて頂きましたが、研ぎはもちろん、時代背景やその捉え方や、何から何まで本当に難しいです。これは在銘無銘問わずですよね。在銘ですら難しく悩ましい。正宗以外でも。



「令和の刀 明治の拵」日本橋三越本店

会期:2022年6月1日(水) ~ 2022年6月6日(月)
会場:日本橋三越本店本館6階美術特選画廊
住所:〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1

↓デジタルカタログをご覧ください
令和の刀明治の拵展 | ebook5

【出品刀匠】
吉原國家
大野義光
三上貞直
宮入小左衛門行平
久保善博
明珍宗裕
河内一平

心技体、凛とした、一本の張り詰めた緊張感。
日本刀の魅力は、古くから日本人の魂の中に息づいてきました。武士の歴史は江戸時代で終焉を迎えましたが、刀における巧みな技と精神は現代まで連綿と受け継がれてきています。
この度日本橋三越で現代を代表する7人の刀匠による太刀や脇差、短刀と、華やかな明治期の拵を一堂に集めた展覧を開催いたします。精神性が高く、浮かび上がる刃文の美しさが魅力の「刀」、伝統工芸の緻密な技が集積する「拵」の世界をどうぞご高覧くださいませ。

令和の刀 明治の拵 | アートギャラリー | 日本橋三越本店 | 三越伊勢丹店舗情報 (mistore.jp)



短刀入札鑑定会

鑑定の当番でしたので今回は短刀(含寸延)ばかり10口での入札鑑定とさせて頂きました。

鑑定刀(製作年代の新しい物から古い物へ順番に並べさせて頂きました)

 1号 脇差  銘 表 吉野山人國平之  
          裏 平成聖代結ふ     刃長 35、5㎝  反り 0、4㎝

 2号 脇差  銘 表 大和住月山貞伸造(花押)  
          裏 平成三十年季夏    刃長 33、4㎝  反り 0、4㎝

 3号 短刀  銘 表 播州住隼光作  
          裏 平成二十四年盛夏   刃長 20、0㎝  反り 無し

 4号 脇差  銘 表 加賀國住両山子正峯作 
          裏 昭和戊申二月吉日   刃長 31、5㎝  反り 0、3㎝

 5号 短刀  銘 表 宮入昭平作 (棟)越後國昭忠彫之年六十六才 
          裏 昭和乙巳年秋吉日   刃長 24、8㎝  反り 無し

 6号 脇差  銘 表 相州住正広
          裏 文明元年弐月日    刃長 45、8㎝  反り 0、5㎝

 7号 脇差  銘 表 三条吉則作      刃長、37、0㎝  反り 1、0㎝

 8号 短刀  銘 表 長谷部国重      刃長 26、0㎝  反り 0、2㎝

 9号 短刀  銘 表 備州長船義光
          裏 興国六年酉乙三月日  刃長、23、8㎝  反り わずかに内ぞり

10号 短刀 無銘   当麻(附)享保四年本阿弥光忠折紙
                       刃長、24、0㎝  反り 内反り

1号 河内國平
2号 月山貞伸
3号 桔梗隼光
4号 隅谷正峯
5号 宮入昭平
6号 相州正広
7号 三条吉則
8号 長谷部国重
9号 長船義光
10号 当麻

入札鑑定に参加される方から「現代刀を当てるのは難しい」との声を聞く事があります。
入札鑑定の現状を見ると、仰る事はごもっとも。
当たらない理由は簡単です。現代刀が出題される機会が少なく、入札鑑定に参加しているだけでは現代刀の知識を得られないからです。
という事で今回は現代刀を少しでも知って頂くべく、10口中5口を現代刀とさせて頂きました。
古い刀も新しい刀も、鑑定のセオリーは全く変わりません。流派や刀工個人の個性を発見し入札につなげます。
現代刀には個性的な刀が沢山あります。特徴を明確に現す流派も多数ありますし、刀工個々の研究工夫から独自の世界を確立した作品も。知る程に楽しいのが現代刀です。
中には一度見たら忘れられない作風の刀もあり、今回も個銘を的中させた方も居られました。
今後も現代刀を知って頂く機会が作れたらと思っています。
この度も大切な御刀を鑑定会のためにご提供下さった皆様には、心より御礼申し上げます。
誠にありがとうございました。