京のかたな 展示№193

展示№193 短刀 銘 大阪住高橋晴雲子信秀七十五歳作
           於京都帝国大学鍛之 大正六年十二月吉日

刀は時代が古いほど軟らかく、新しいほど硬い傾向にあります。
しかしあくまでその傾向にあるというだけで、全てがそうではありません。硬い古刀もありますし軟らかい現代刀も多数あります。

”錵物は折れる”という話を聞く事はありますが実際どうなのでしょうか。私は切った事がないので分かりませんが、そう単純では無いと思っています。
「脆い=折れる」は正しいですが「硬い=折れる」は言葉足らずですし、「錵出来=硬い」は必ずしも正しいとはいえません。
過去に研磨させて頂いた特に硬い刀を複数あげたなら、その多くが匂い出来或いは小錵出来の刀です。
それらは硬過ぎて研磨に大変苦労しましたが、研磨中の刃こぼれの心配などは全くなく、硬さと同時に大変粘りのある鉄質でした。
これは研磨した時の所謂”砥当たり”による硬軟の判定なのですが、この砥当たり判定も砥石の粒度や質により様々で、例えば金剛砥で硬く苦労をしても内曇りの効きは早い刀、またその逆もありこれまた単純ではないのです。

さて展示№193、高橋長信が京都帝大で鍛えた刀、匂い主体の互の目に所々小錵の錵筋が走ります。
図録解説中に「日本刀にあるまじき高硬度で製作されていることが判明した」とある通り、強烈な硬さでした。
京都帝大内で日本刀に関する様々な実験を行うなか製作されたと考えられ、大変興味深い作品です。